✍️ 本記事は、アストラサナ・ジャパンのKOL(Key Opinion Leader)である 正高佑志 医師 の執筆に基づいて作成されています。
CBDや大麻医療に関する最新の科学的エビデンスをわかりやすくお届けすることを目的としています。
なお、本記事の内容は特定の効果効能を保証するものではなく、診断・治療・予防を目的としたものではありません。
自閉スペクトラム症(ASD)や知的障害に伴う行動面の困難に対して、CBD(カンナビジオール)を検討した臨床試験が海外で複数報告されています。本記事では、イスラエル・ブラジル・オーストラリアで実施された3件のランダム化比較試験を、対象人数・投与内容・統計結果まで整理して解説します。
ASDそのものを治す薬剤はない。研究の対象は随伴する症状である
自閉スペクトラム症(ASD)は発達障害の一種で、こだわりの強さやコミュニケーションの困難さを特徴とする状態です。
診断される子どもの数は増加を続けています。この30年で約3倍となり、米国では100人に1人以上がASDと診断されると報告されています(原著の記載。なお米国CDCは2022年調査に基づき、8歳児の31人に1人と2025年に公表しています)。
ASDでは、不眠・不安・興奮・自傷・攻撃性・てんかんなどの症状を伴うことが多く、本人と家族の生活に大きな影響を与えます。薬剤でASDそのものを治すことはできません。研究の対象となっているのは、これらの随伴症状への対処です。

臨床試験は3件。対象年齢・製剤・評価指標はいずれも異なる
CBDを含む製剤をASDまたは知的障害の児童・青年に投与したランダム化比較試験は、イスラエル(150名)、ブラジル(60名)、オーストラリア(8名)の3件が報告されています。
① イスラエル(2021年, Aran et al.):主要評価項目は有意差なし、副次評価で差が出た
- 対象:ASDの児童・青年150名(5〜21歳)
- 群構成:①全草抽出のカンナビノイド製剤(CBD:THC=20:1)②精製カンナビノイド製剤 ③プラセボ
- 期間:12週間投与+4週間の休薬をはさむクロスオーバー
- 主要評価項目(HSQ-ASD総スコア):群間に有意差は認められなかった
- 副次評価(CGI-I による行動改善):全草抽出群49% 対 プラセボ群21%(p = 0.005)
- 副次評価(SRS総スコア):全草抽出群14.9点改善 対 プラセボ群3.6点改善(p = 0.009)
- 安全性:重篤な有害事象は報告されていない

② ブラジル(Silva Junior et al.):社会的相互作用・不安・精神運動興奮で有意差
- 対象:ASDの小児60名(5〜11歳。実薬31名/対照29名)
- 投与:CBD優位の大麻抽出物(CBD:THC=9:1、濃度0.5%)。1日6滴から開始し、12週間で最大70滴まで漸増
- 期間:12週間
- 結果:社会的相互作用(p = 0.0002)、不安(p = 0.016)、精神運動興奮(p = 0.003)、食事回数(p = 0.04)で有意差
- 結果(軽度ASDのみ):集中力(p = 0.01)
- 安全性:実薬群31名中3名(9.7%)に軽度の有害事象(めまい、不眠、腹痛、体重増加)
③ オーストラリア(2021年, Efron et al.):実施可能性を確認する8名のパイロット試験
- 対象:重度の行動上の問題を伴う知的障害の児童・青年8名(8〜16歳)
- 投与:98%カンナビジオールオイル。9日間で20mg/kg/日まで漸増(最大500mgを1日2回)
- 期間:8週間、プラセボ対照
- 結果:重篤な有害事象と脱落はなく、来院率100%・服薬遵守率100%。実薬に有利な有効性のシグナルが観察された
3試験の比較

| 研究 | 国 | 対象 | 製剤 | 主な結果 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aran et al. | イスラエル | ASD 150名(5〜21歳) | CBD:THC=20:1 全草抽出/精製品 | 主要評価項目は有意差なし。CGI-I 49% 対 21%(p = 0.005) | DOI |
| Silva Junior et al. | ブラジル | ASD 60名(5〜11歳) | CBD:THC=9:1(0.5%) | 社会的相互作用 p = 0.0002、不安 p = 0.016、精神運動興奮 p = 0.003 | DOI |
| Efron et al. | オーストラリア | 知的障害 8名(8〜16歳) | 98% CBDオイル 20mg/kg/日 | 実施可能性を確認。有効性の判定は規模上不可 | DOI |
現時点で言えるのは「随伴症状への効果を検証する段階にある」まで
3件の試験は、CBDを含む製剤がASDや知的障害に伴う行動面の症状に作用する可能性を検討したものです。ブラジルの試験では複数の項目で有意差が得られた一方、最大規模のイスラエルの試験では主要評価項目に有意差が出ていません。オーストラリアの試験は8名の実施可能性研究です。
製剤のCBD:THC比、対象年齢、評価尺度がそろっていないため、3件を単純に足し合わせて結論を出すことはできません。根本的な治療ではない点も共通しています。日本でも臨床研究が進むことが期待されます。
神経疾患に伴う行動症状へのカンナビノイド医薬品の研究は、アルツハイマー病の興奮症状とナビロン(反応予測)で扱っています。CBDと認知機能の研究レビューは、CBDは認知機能を改善する?36の臨床試験から分かった効果と可能性をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
CBDで自閉症は治りますか?
治りません。3件の試験が検討したのは、不安・興奮・行動上の問題といった随伴症状に対する作用です。ASDそのものを治す薬剤は現時点で存在しません。
子どもに使って安全ですか?
3件の試験では重篤な有害事象は報告されていません。ブラジルの試験では実薬群の9.7%に軽度の有害事象(めまい、不眠、腹痛、体重増加)が生じています。いずれも医師の管理下で実施された研究であり、長期的な安全性は確認されていません。
市販のCBD製品と、試験で使われた製剤は同じものですか?
異なります。3件の試験で用いられたのはTHCを含む製剤、または98%純度のCBDオイルです。市販のCBD製品とは組成も用量も一致しません。
3つの試験の結果は一致していますか?
一致していません。ブラジルの試験は複数項目で有意差を報告し、イスラエルの試験は主要評価項目で有意差を示していません。オーストラリアの試験は有効性を判定する規模ではありません。
日本でCBDを使うことは認められていますか?
この点は、本記事で扱う研究の有効性そのものとは別に、一般的な規制情報として整理します。日本では、CBDを含む製品であっても、製品中のΔ9-THCが法令上の残留限度値を超える場合は規制対象となります。国内で使用する際は、残留限度値などの基準に適合した製品であることを確認する必要があります。また、疾患の治療・予防を目的とした医薬品としての使用は、承認された医薬品によって行われます。規制や承認状況は変更されることがあるため、最新情報を確認してください。
出典一覧
- Aran A, et al. Cannabinoid treatment for autism: a proof-of-concept randomized trial. Mol Autism. 2021;12(1):6. doi:10.1186/s13229-021-00420-2(PMID: 33536055)
- Silva Junior EA, et al. Evaluation of the efficacy and safety of cannabidiol-rich cannabis extract in children with autism spectrum disorder: randomized, double-blind, and placebo-controlled clinical trial. Trends Psychiatry Psychother. 2024;46:e20210396. doi:10.47626/2237-6089-2021-0396
- Efron D, et al. A pilot randomised placebo-controlled trial of cannabidiol to reduce severe behavioural problems in children and adolescents with intellectual disability. Br J Clin Pharmacol. 2021;87(2):436-446. doi:10.1111/bcp.14399(PMID: 32478863)
- Centers for Disease Control and Prevention. Data and Statistics on Autism Spectrum Disorder(2022年調査、2025年公表)

正高佑志 医師
アストラサナ・ジャパン KOL(Key Opinion Leader)
1985年生まれ。医師。熊本大学医学部医学科卒。一般社団法人GREEN ZONE JAPAN代表理事&臨床カンナビノイド学会副理事長として、大麻草の安全性や有用性に関する啓発活動に従事。著書『お医者さんがする大麻とCBDの話』など。
専門分野:カンナビノイド医療、精神医学、依存症治療


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