寝る前の飲み物で最初に決めることは「飲まないもの」を決めること
寝る前に飲むといいものを選ぶ前に、カフェインを含む飲料とアルコールを夕方以降に避けることが、公的資料で根拠が示されている最初の対処です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、睡眠に影響を及ぼす代表的な嗜好品としてカフェイン、アルコール、ニコチンの3つを挙げ、使用量や使用時刻を誤ると睡眠を悪化させると記しています[1, p.30]。一方で、睡眠改善のためにおすすめの食事はあるかという問いに対し、現時点で睡眠の質改善に寄与する個別の食品等は特定されていないと答えています[1, p.28]。
つまり、「これを飲めば眠れる」という飲み物を公的資料から示すことはできず、「これを飲まなければ眠りを妨げない」という飲み物は明確に示されています。
避けたい飲み物1:カフェインを含む飲料は夕方以降に飲まない
カフェインを含む飲料は、夕方以降に100mg以上を摂取すると入眠困難や深い睡眠の減少、中途覚醒の増加が生じるとされ、1日の合計も400mgを超えないことが推奨されています。
同ガイドによると、日本人のカフェインの血中半減期は3〜7時間とばらつきがあります。半減期が5時間の場合、朝9時に400mgを一度に摂取すると14時に200mg相当、19時に100mg相当が体内に残り、19時に100mgを摂取すると24時になっても50mg分が残る計算になります[1, p.30]。18〜65歳を対象とした系統的レビューでは、107mgを超えるカフェインは就寝の約9時間前の摂取でも、217.5mgを超えると約13時間前の摂取でも夜間の睡眠に影響することが示されています[1, p.31]。
カフェインを含む代表的な飲料
| 飲料 | 注意点 | 根拠 |
|---|---|---|
| コーヒー | 400mgの目安はドリップコーヒーで珈琲カップ4杯分(700cc)、ペットボトルコーヒーで1.5本分(750cc) | ガイド2023 p.30 |
| 紅茶・緑茶・ウーロン茶 | 茶葉(チャノキ)を使う茶類はカフェインを含む | ガイド2023 p.31 |
| コーラタイプの飲料 | カフェインを含む。こどもは感受性が高く注意が必要 | ガイド2023 p.32 |
| エナジードリンク | 製品によりコーヒーの5倍近いカフェインを含むものがある。摂取は朝に限るなどの注意が必要 | ガイド2023 p.31 |
| 麦茶・そば茶・黒豆茶・とうもろこし茶・カフェインを含まないハーブティー | 茶葉を使っていないためカフェインを含まない。置き換え先として挙げられている | ガイド2023 p.31 |
同ガイドは、良質な睡眠の確保の観点から、カフェインの摂取総量を減らすとともに夕方以降はカフェイン含有飲料の摂取を控え、麦茶などカフェインを含まない飲料に置き換えるのもよいとしています[1, p.31]。e-ヘルスネットは、カフェインに敏感な人は就寝の5〜6時間前から控えるのがよいとしています[2]。
避けたい飲み物2:寝酒は寝つきを良くしても睡眠の後半を壊す
寝酒は一時的に寝つきを促しますが、睡眠後半の眠りの質を顕著に悪化させ、連用すると飲まないと眠れない状態に至る可能性があるため、公的資料では推奨されていません。
同ガイドによると、アルコールは一時的には寝つきを促進し睡眠前半の深い睡眠を増やしますが、睡眠後半の眠りの質は顕著に悪化し、飲酒量が増えるにつれて中途覚醒回数が増加します[1, p.31]。アルコールの代謝で生じるアセトアルデヒドは強い交感神経刺激作用を持ち、睡眠を阻害する血中のカテコールアミンを増加させます[1, p.31]。
さらに、アルコールは連用で依存や耐性を形成し、離脱作用によって飲まないとよく眠れない状態に至る可能性があるため、寝酒を含めて大量摂取や毎日の飲酒は推奨されないとしています[1, p.31〜32]。日本人を含むアジア人はアルデヒド分解酵素(ALDH)の活性が低い人が多く、少量でも影響を強く受けやすいと記されています[1, p.31]。
毎日寝酒を続けている場合、急にやめると離脱等によって不眠となることがあり、週単位で徐々に量を減らすか、医療機関で相談しながら断酒するとよいとされています[1, p.32]。
寝る前に飲むなら:カフェインを含まない温かい飲み物を少量
寝る前に飲むなら、カフェインを含まない飲み物を、夜間のトイレで目が覚めない程度の量にとどめることが、公的資料の記載から導ける範囲の答えになります。
- 麦茶、そば茶、黒豆茶、とうもろこし茶、カフェインを含まないハーブティー:同ガイドが茶類の置き換え先として挙げています[1, p.31]。
- 水・白湯:同ガイドはカフェインレスの麦茶や水を上手に利用するとよいとしています[1, p.32]。
- 温かい飲み物:同ガイドは入浴などで身体を温め、その後の放熱で深部体温が下がることが入眠を促すとしています[1, p.23]。温かい飲み物について直接の記載はなく、効果は確認できていません。
- ホットミルク:睡眠の質改善に寄与する個別の食品等は特定されていないとされており[1, p.28]、本記事の範囲では根拠を示せません。
量とタイミングの目安
同ガイドは、日中に摂取した食塩の過剰分は睡眠中に排泄されるため夜間の排尿回数が増え、減塩で夜間頻尿が軽減し、夜中に目覚める頻度が減ることが期待できると記しています[1, p.27]。就寝直前の夜食や間食は体内時計を後退させ、翌朝の睡眠休養感や主観的睡眠の質を低下させることも報告されています[1, p.27]。寝る前の飲み物も、糖分や塩分の多いものを避け、就寝直前の大量摂取を避けるのが無難です。
飲み物より効果が確認されている3つの習慣
飲み物の選択より、入浴のタイミング、夕方以降のカフェイン回避、寝酒をやめることの3つは、公的資料で根拠が示されています。
- 入浴:就寝の約1〜2時間前の入浴は、入浴後の熱放散を促進し、速やかな入眠が得られることが報告されています[1, p.23]。e-ヘルスネットは、40℃の湯に10〜15分浸かると深部体温が1時間ほどで0.8〜1.0℃上がり、その後の低下が寝つきを良くすると記しています[2]。
- 夕方以降のカフェイン回避:前述のとおり、半減期3〜7時間のカフェインは夕方の摂取が夜間に残ります[1, p.30]。
- 寝酒をやめる:寝酒は睡眠の質の悪化と関連し、寝酒の原因となる不眠症状がある場合は医師への相談が推奨されています[1, p.31]。
受診の目安:飲み物を変えても眠れない、寝酒をやめられないなら相談する
飲み物を見直しても眠れない状態や日中の不調が続く場合、または寝酒をやめると眠れない場合は、医師に相談することが目安になります。
同ガイドは、ガイドの内容を実践しても睡眠に関連する症状が続き日中の生活に影響している場合は速やかに医師に相談するよう記しています[1, p.34]。寝酒の原因となる不眠症状がある場合も医師への相談が推奨されています[1, p.31]。e-ヘルスネット「不眠症」は、不眠と日中の不調が週3日以上・3か月以上続く場合を慢性不眠症と区分し、家庭での対処で効果が出ないときは専門医に相談するよう勧めています[3]。
よくある質問(FAQ)
寝る前にホットミルクを飲むと眠れますか
「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、現時点で睡眠の質改善に寄与する個別の食品等は特定されていないと記しています[1, p.28]。本記事で参照した公的資料の範囲では、ホットミルクの効果を示す記載は確認できませんでした。
カフェインレスコーヒーなら寝る前に飲んでもよいですか
同ガイドはカフェインレスの麦茶や水の利用を勧めていますが[1, p.32]、カフェインレスコーヒーのカフェイン残存量については記載がありません。製品の表示を確認し、敏感な人は夕方以降を避けるのが無難です。
夜にコーヒーを飲んでも眠れる人は問題ありませんか
同ガイドは、カフェインの代謝能力には個人差が大きく、入眠に問題がない場合でも睡眠時間の短縮や深睡眠の減少は多くの人にみられるため注意が必要だと記しています[1, p.32]。
少量のお酒なら睡眠に影響しませんか
同ガイドは、少量の飲酒であれば眠る前にアルコールやアセトアルデヒドの多くは代謝されるが、多量飲酒では高率に睡眠に悪影響が生じ、代謝能力には性差・個人差があり加齢でも低下するため飲酒量に注意が必要だとしています[1, p.32]。
眠りに良いというサプリメントや健康食品は効果がありますか
本記事で参照した公的資料の範囲では、サプリメントや健康食品の睡眠への効果を評価する基準は確認できませんでした。e-ヘルスネットは、市販の睡眠薬はアレルギー薬の副作用(眠気)を利用したもので短期間の使用に限られ、不眠症に対する治療効果は確かめられていないと記しています[3]。使用の可否は医師・薬剤師に相談し、規制や基準の最新情報を確認してください。
まとめ
- 公的資料で根拠が示されているのは「避けたい飲み物」で、カフェイン含有飲料は夕方以降に飲まず1日400mg以下、寝酒はしないことです。
- 「飲めば眠れる」飲み物は特定されておらず、寝る前はカフェインを含まない飲み物を少量にとどめます。
- 飲み物より、就寝の約1〜2時間前の入浴、夕方以降のカフェイン回避、寝酒をやめることの効果が確認されています。
- 寝酒をやめると眠れない、見直しても眠れない場合は医師に相談します。
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参考文献・出典
- 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」令和6年2月(厚生労働省). 良質な睡眠のための環境づくりについて p.23、運動、食事等の生活習慣と睡眠について p.27〜28、睡眠と嗜好品について p.30〜33、睡眠障害について p.34. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
- 三島和夫「快眠と生活習慣」e-ヘルスネット(厚生労働省)最終更新2025年6月1日. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
- 三島和夫「不眠症」e-ヘルスネット(厚生労働省)最終更新2023年1月23日. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001.html
この記事は一般的な生活情報であり、特定製品の効果を示すものではありません。診断や治療は医師に相談してください。


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