眠りが浅いとは、深いノンレム睡眠が減り、中途覚醒が増えている状態
眠りが浅いという感覚は、睡眠の前半に出るはずの深いノンレム睡眠が減り、途中で目が覚める回数や時間が増え、睡眠で休養がとれた感覚が得られていない状態として整理できます。
厚生労働省のe-ヘルスネット「眠りのメカニズム」によると、ヒトの睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠で構成され、約90分周期で繰り返されます。睡眠は深いノンレム睡眠(段階3と4)から始まり、朝方に向けて浅いノンレム睡眠(段階1と2)が増え、睡眠後半に向けてレム睡眠が長くなります[2]。深いノンレム睡眠は、昼間に酷使した大脳皮質を睡眠前半で集中的に冷却し休養させる役割を持ちます[2]。
「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、睡眠の質を反映する指標として「睡眠休養感(睡眠で休養がとれている感覚)」を置き、睡眠時間の不足だけでなく、睡眠環境、生活習慣、嗜好品、睡眠障害の有無などさまざまな要因で影響を受けると記しています[1, p.8]。
眠りが浅くなる理由は加齢と5つの生活要因に分けられる
眠りが浅い理由は、加齢による生理的な変化と、床上時間、光、覚醒物質、寝室環境、生活リズムという5つの生活要因に分けて考えると整理しやすくなります。
加齢:深い睡眠は年齢とともに減る
同ガイドによると、脳波で測定した実際の睡眠時間は15歳前後で約8時間、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間と、成人後は20年ごとに30分程度短くなります[1, p.8]。e-ヘルスネットは、加齢で深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が減少すると記しています[3]。年齢相応の変化は病気に当たらず、睡眠時間の長さや目覚めの回数にこだわりすぎないことが大切だとされています[4]。
要因1:床上時間が長すぎる
必要以上に床の上で長く過ごすと「寝つくまでに長く時間がかかる」「途中で目が覚める時間(回数)が増える」「熟眠感が減る」など、眠りの質が低下します[1, p.8]。45歳以上では床上時間が増え、75歳では7.5時間を超えるため、高齢世代は床上時間が過剰になりやすいとされています[1, p.8]。
要因2:夜間の光と寝室の明るさ
寝ている間は低い照度の光でも中途覚醒時間を増加させ、睡眠効率を下げることが報告されています。観察研究の系統的レビューでも、夜間の光曝露が睡眠障害と関連していました[1, p.23]。
要因3:カフェイン・アルコール・ニコチン
脳波で睡眠を評価した研究では、1日に摂取するカフェインの量が増えるほど深い睡眠が減少し、中途覚醒が増え、睡眠効率が低下し、総睡眠時間が短縮することが報告されています[1, p.30]。アルコールは睡眠前半で深い睡眠を増やす一方、睡眠後半の眠りの質を顕著に悪化させ、飲酒量が増えるほど中途覚醒が増えます[1, p.31]。習慣的にニコチンを摂取している人は非喫煙者と比べて中途覚醒や深睡眠の減少が高度だと報告されています[1, p.31]。
要因4:寝室の温度と音
夏の寝室の室温上昇時に睡眠時間が短縮し睡眠効率が低下することが、実生活下の調査で報告されています[1, p.24]。寝室内の騒音は睡眠効率の低下、入眠潜時・中途覚醒時間の延長と有意に関連していました[1, p.24]。WHOは冬の室温を18℃以上に保つこと、欧州WHOガイドラインは夜間の屋外騒音を40dB未満とすることを推奨しています[1, p.24]。
要因5:生活リズムの乱れと運動不足
不規則な就寝時刻や食事のタイミングは体内時計の遅れや乱れを招き、主観的な睡眠の質を低下させます[1, p.27]。運動習慣がない人は睡眠休養感が低いことがわかっており、有酸素運動の習慣は深い睡眠や睡眠時間を増やすと報告されています[1, p.26]。
要因と見直しの対応表
| 要因 | 眠りに起きること | 見直し方 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 床上時間が長い | 寝つき悪化・中途覚醒増加・熟眠感低下 | 眠気が来てから寝床に入り、起床時刻をそろえる | ガイド2023 p.8, p.27 |
| 夜間の光 | 中途覚醒時間の増加、睡眠効率の低下 | 寝室を暗くし、端末を持ち込まない | ガイド2023 p.23 |
| カフェイン | 深い睡眠の減少、中途覚醒の増加 | 1日400mg以下、夕方以降は控える | ガイド2023 p.30 |
| アルコール | 睡眠後半の質の悪化、中途覚醒の増加 | 寝酒をしない、深酒を避ける | ガイド2023 p.31 |
| 寝室の温度・音 | 睡眠効率の低下、入眠・中途覚醒の延長 | 夏は冷房、冬は寝具で保温、防音・遮光カーテン | ガイド2023 p.24〜25 |
| 運動不足・不規則な生活 | 睡眠休養感の低下、体内時計の乱れ | 習慣的な有酸素運動、規則正しい食事と就寝 | ガイド2023 p.26〜27 |
深い眠りを取り戻すための生活の見直し手順
眠りが浅い状態を改善する手順は、床上時間を必要な睡眠時間に合わせ、日中の活動と夜の環境で睡眠休養感を高めるという順番で進めます。
- 床上時間を見直します。同ガイドは高齢者について、1週間の平均睡眠時間(実際に眠っている時間)+30分程度を床上時間の目安とし、床上時間が8時間以上にならないことを推奨しています[1, p.18〜19]。
- 起床時刻を平日・休日でそろえ、起床後に朝日を浴びます。日中に1,000ルクス以上の光を浴びることで夜間のメラトニン分泌量が増えます[1, p.23]。
- 日中に体を動かします。中強度以上の身体活動(有酸素運動や筋力トレーニング)をできるだけ長く行うことが睡眠改善に有効とされています[1, p.26]。
- 夕方以降のカフェインを控え、寝酒をやめます。カフェインの血中半減期は3〜7時間で、夕方以降に100mg以上を摂取すると深い睡眠(徐波睡眠)の減少や中途覚醒の増加が生じるとされています[1, p.30]。
- 寝室を暗く、静かに、適温に整えます。夏はエアコンで涼しく保ち、冬は寝具で寝床内を暖かく維持します[1, p.24]。
- 就寝の約1〜2時間前に入浴し、就寝前1時間はリラックスして過ごします[1, p.23, p.27]。
「夢をよく見る」は眠りが浅い証拠か
レム睡眠は睡眠後半に向けて1回ごとの時間が増え、脳波活動が比較的活発で夢をよく見る睡眠です[2]。夢を見ること自体は正常な睡眠サイクルの一部です。e-ヘルスネットは、眠りが浅く感じられても昼間の生活に支障がなければ不眠症とは診断されないと記しています[4]。
受診の目安:生活を見直しても休養感がなく、日中に支障が続くなら医師に相談する
生活要因を見直しても眠りが浅い状態と日中の支障が続く場合は、睡眠障害が隠れている可能性があるため、医師に相談することが目安になります。
同ガイドは、睡眠休養感の低下が認められる代表的な睡眠障害として不眠症、睡眠不足症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群を挙げています。閉塞性睡眠時無呼吸は睡眠中に繰り返し生じる上気道の閉塞によって頻回の中途覚醒を来たし、周期性四肢運動障害は睡眠中の四肢の不随意運動によって中途覚醒を来たすため、いずれも中途覚醒型の不眠症と誤認されることがあります[1, p.34〜35]。
同ガイドは、睡眠時間を十分確保しているにもかかわらず睡眠休養感が低下した場合、医療機関などで原因を詳しく調べてもらう必要があると記しています[1, p.9]。日中の眠気が強い場合は、積極的に専門医療機関で検査を受けることが勧められています[1, p.14]。
よくある質問(FAQ)
眠りが浅い人の特徴はありますか
「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、運動習慣がない人は睡眠休養感が低いこと、カフェイン摂取量が多いほど深い睡眠が減ること、習慣的な喫煙者は中途覚醒や深睡眠の減少が高度であることを記しています[1, p.26, p.30〜31]。加齢で深い睡眠が減る生理的変化もあります[1, p.8]。
眠りが浅いのは睡眠時間が足りないからですか
睡眠時間の不足も一因ですが、同ガイドは睡眠休養感が睡眠時間の不足だけでなく、睡眠環境、生活習慣、嗜好品、睡眠障害の有無などで影響を受けると記しています[1, p.8]。床上時間が長すぎても眠りの質は下がります[1, p.8]。
眠りが浅いときに昼寝をしてもよいですか
e-ヘルスネットは、日中に眠気があるときは午後3時前までに30分以内の昼寝が効果的としています[4]。同ガイドは高齢者について、長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため避けるよう記しています[1, p.18]。
寝ている間の物音は眠りに影響しますか
同ガイドは、睡眠中も聴覚からの刺激は脳に伝達され、自律神経系やホルモン分泌に影響する可能性が指摘されていると記し、防音・遮光カーテンへの交換や寝床の位置を窓から離すことで眠りが改善する可能性があるとしています[1, p.25]。
眠りが浅いときにサプリメントや市販薬は使えますか
e-ヘルスネットは、市販の睡眠薬はアレルギー薬の副作用(眠気)を利用したもので短期間の使用に限られ、不眠症に対する治療効果は確かめられていないと記しています[4]。サプリメントや健康食品の効果については、本記事で参照した公的資料の範囲では評価の基準が確認できませんでした。使用の可否は医師・薬剤師に相談し、規制や基準の最新情報を確認してください。
まとめ
- 眠りが浅いとは、深いノンレム睡眠が減り、中途覚醒が増え、睡眠休養感が得られていない状態です。
- 理由は加齢の生理的変化と、床上時間・光・覚醒物質・寝室環境・生活リズムの5つの要因に分けられます。
- 床上時間を実際の睡眠時間に合わせ、朝の光と日中の運動、夕方以降のカフェイン回避、寝室の暗さ・静かさ・温度で見直します。
- 見直しても休養感がなく日中の支障が続く場合は、医師に相談します。
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参考文献・出典
- 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」令和6年2月(厚生労働省). 睡眠に関する基本事項 p.8〜9、成人版 p.11〜14、高齢者版 p.18〜19、良質な睡眠のための環境づくりについて p.23〜25、運動、食事等の生活習慣と睡眠について p.26〜29、睡眠と嗜好品について p.30〜33、睡眠障害について p.34〜37. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
- 三島和夫「眠りのメカニズム」e-ヘルスネット(厚生労働省)最終更新2023年1月23日. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-002.html
- 「ノンレム睡眠」e-ヘルスネット用語集(厚生労働省). https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-048.html
- 三島和夫「不眠症」e-ヘルスネット(厚生労働省)最終更新2023年1月23日. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001.html
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