眠れない夜にまずすること:無理に眠ろうとせず、一度寝床を離れる
眠れない夜の対処法の基本は、眠気がないまま寝床で粘らず、一度寝床を離れて静かな場所で眠気を待ち、眠くなってから寝床に戻ることです。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、眠気が訪れていないのに無理に眠ろうとすると脳の興奮が高まり、寝つきを悪化させることがあると記しています[1, p.27]。同ガイドは「なかなか寝つけないときは、一旦寝床を離れ、寝床以外の静かで暗めの安心感が得られる場所で、眠気が訪れるまで安静状態で過ごし、眠気が訪れてから寝床に戻りましょう」と勧めています[1, p.27]。
寝床で長く過ごすこと自体も眠りの質を下げます。同ガイドは、必要以上に床の上で長く過ごすと「寝つくまでに長く時間がかかる」「途中で目が覚める時間(回数)が増える」「熟眠感が減る」など、眠りの質が低下すると記しています[1, p.8]。
寝床を離れてから戻るまでの手順
- 眠れないまま時間が過ぎていると感じたら、時計を確認せずに寝床を出ます。
- 寝室以外の、暗めで静かな場所に移ります。照明は最小限にし、スマートフォンは見ません。
- 座るか横になり、呼吸をゆっくり整えます。読書や軽いストレッチなど、頭を使いすぎない行動にとどめます。
- まぶたが重くなる、あくびが出るなど、眠気の合図が出てから寝床に戻ります。
- 寝床に戻っても眠れなければ、同じ手順を繰り返します。
- 翌朝は、眠れた時間にかかわらず、いつもの時刻に起きます。
眠れない原因は「体温」「光」「覚醒物質」「焦り」の4つに整理できる
眠れない時の原因は、深部体温が下がりにくい状態、夜間の強い光、カフェインなどの覚醒物質、眠れないことへの焦りの4つに大別でき、いずれも生活の調整で対処できます。
1. 深部体温が下がらない
ヒトの深部体温はおよそ24時間周期で変動し、夜間の睡眠時に低下します。就寝前に手足の皮膚血流が増えて熱が放散され、深部体温が下がり始めると、入眠しやすい状態になります[1, p.23]。冬に就寝前に過ごす部屋の室温が低いと、入眠までの時間が延びることが報告されています[1, p.24]。
2. 夜間の光
就寝の2時間ほど前から、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まります。それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると分泌が抑えられ、睡眠・覚醒リズムが遅れて入眠が妨げられることが報告されています[1, p.23]。LED照明やスマートフォンの光には、体内時計への影響が強い短波長光(ブルーライト)が多く含まれます[1, p.23]。
3. カフェイン・アルコール・ニコチン
カフェインは覚醒作用を持ち、寝つきの悪化、中途覚醒の増加、眠りの質の低下を招く可能性があります[1, p.30]。アルコールは一時的に寝つきを促しますが、睡眠後半の眠りの質を顕著に悪化させ、飲酒量が増えるほど中途覚醒が増えることが報告されています[1, p.31]。ニコチンにも覚醒作用があり、就寝前の喫煙は寝つきの悪化、中途覚醒の増加、深い睡眠の減少をもたらします[1, p.31]。
4. 眠れないことへの焦り
睡眠時間や就床時刻に過剰にこだわり、眠気がないのに無理に眠ろうとすると、脳の興奮がむしろ高まります。寝つけないことを必要以上に悩んだり、日中の悩み事を寝床に持ち込んだりすると、さらに寝つけなくなります[1, p.27]。
原因と対処の対応表
| 原因 | 体で起きていること | 今夜できる対処 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 深部体温が下がらない | 手足からの放熱が進まず入眠しにくい | 就寝の約1〜2時間前に入浴する。冬は就寝前に過ごす部屋を暖かく保つ | ガイド2023 p.23〜24 |
| 夜間の光 | メラトニン分泌が抑えられ体内時計が遅れる | 寝室にスマートフォンを持ち込まず、照明を落として寝る | ガイド2023 p.23 |
| カフェイン | 覚醒作用が数時間残る(血中半減期3〜7時間) | 夕方以降はカフェインを含む飲料を避ける | ガイド2023 p.30 |
| アルコール | 睡眠後半の質が悪化し中途覚醒が増える | 寝酒をしない。晩酌は控えめにする | ガイド2023 p.31 |
| 眠れないことへの焦り | 脳の興奮が高まり寝つきが悪化する | 寝床を離れ、眠気が来てから戻る | ガイド2023 p.27 |
今夜からできるセルフケアの手順:就寝前の1時間を切り替えの時間にする
眠れない時の対処法としてすぐに取り組めるのは、就寝前の1時間をリラックスに充て、光・体温・覚醒物質の3点を整えることです。
「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、寝床に就く前に少なくとも1時間は家事や仕事、勉強に追われずリラックスする時間を確保することが有効だと記しています[1, p.27]。リラクゼーション法としては、一般的な瞑想法、静かに行うヨガ、腹式呼吸、筋弛緩法、音楽、アロマなどが入眠を促し眠りの質を高める可能性が示されています。一方で、全ての人に効果が保証された方法はなく、一人ひとりに合う方法を見つけることが重要だとしています[1, p.27]。
就寝前チェックリスト
- 就寝の約1〜2時間前に入浴した。極端に熱い湯は避けた(湯温が極端に高いと交感神経の活動が高まり、入眠を妨げる可能性がある)[1, p.23〜24]
- 夕方以降、コーヒー・紅茶・緑茶・エナジードリンクなど、カフェインを含む飲料を飲んでいない[1, p.30〜31]
- 寝酒をしていない[1, p.31〜32]
- 就寝前の1時間は、仕事・家事・勉強から離れている[1, p.27]
- 寝室にスマートフォン・タブレットを持ち込んでいない[1, p.23]
- 寝室の照明を落としている[1, p.23]
- 夏はエアコンで寝室を涼しく保ち、冬は寝具で寝床内を暖かくしている[1, p.24]
- 就寝直前の夜食・間食を控えている[1, p.27]
カフェインは思ったより長く体に残る
同ガイドによると、日本人のカフェインの血中半減期は3〜7時間とばらつきがあります。半減期が5時間の場合、朝9時に400mgを一度に摂取すると、14時に200mg相当、19時に100mg相当が体内に残る計算になります[1, p.30]。夕方以降に100mg以上を摂取すると入眠困難や深い睡眠の減少、中途覚醒の増加が生じるとされ、1日の摂取量は400mg(ドリップコーヒーでカップ4杯・700cc程度)を超えないことが推奨されています[1, p.30]。18〜65歳を対象とした系統的レビューでは、107mgを超えるカフェインは就寝の約9時間前の摂取でも夜間の睡眠に影響し、217.5mgを超えると約13時間前の摂取でも影響することが示されています[1, p.31]。
眠れない夜を繰り返さないために:朝の光・運動・起床時刻で体内時計を整える
眠れない夜を減らすには、夜の対処だけでなく、朝の光を浴びる、日中に体を動かす、起床時刻をそろえるという3つの習慣で体内時計を整えることが基本になります。
- 朝の光:起床後に朝日の強い光を浴びると体内時計がリセットされ、睡眠・覚醒リズムが整います。日中に1,000ルクス以上の光を浴びることで夜間のメラトニン分泌量が増え、入眠が促されます[1, p.23]。
- 運動:ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は寝つきを良くし、深い睡眠や睡眠時間を増やすと報告されています[1, p.26]。夕方や夜の運動でも就寝の約2〜4時間前までであれば睡眠改善に有効とされる一方、就寝前1時間以内の激しい運動は眠りを妨げる可能性があります[1, p.26, p.28]。
- 起床時刻と朝食:休日の起床時刻が大きく遅れると体内時計が混乱します[1, p.12]。1週間程度朝食を欠食すると体内時計が後退することが報告されており、朝食は体内時計の調整に役立ちます[1, p.27]。
- 睡眠時間の目安:成人ではおおよそ6〜8時間が適正と考えられ、1日6時間以上を目安に確保することが推奨されています。適正な睡眠時間には個人差があります[1, p.11]。
受診の目安:生活を整えても眠れない状態が続くなら医師に相談する
生活習慣を見直しても眠れない状態や日中の支障が続く場合は、睡眠障害が隠れている可能性があるため、医師に相談することが目安になります。
「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、眠れない、休養がとれた感覚がない、日中の眠気が強いといった症状が、睡眠環境・生活習慣・嗜好品に起因する場合と、睡眠障害に起因する場合があると整理しています。ガイドの内容を実践しても症状が継続し、日中の生活に影響している場合は「速やかに医師に相談しましょう」と記しています[1, p.34]。
厚生労働省のe-ヘルスネット「不眠症」の項では、夜間の不眠と日中の不調が週に3日以上あり、3か月以上続く場合を慢性不眠症、3か月未満を短期不眠症と区分しています。一般成人の30〜40%が何らかの不眠症状を持ち、慢性不眠症は成人の約10%とされています[2]。不眠症状とともに気分の落ち込み、意欲や興味の減退がある場合は、早めに専門医を受診するよう勧めています[2]。
眠れない症状の裏にある代表的な睡眠障害
| 症状の特徴 | 考えられる睡眠障害 | 相談先の目安 |
|---|---|---|
| 寝つけない、途中で目が覚める、早く目が覚める状態が続き、日中に支障がある | 不眠症 | かかりつけ医、精神科・心療内科、睡眠外来 |
| いびき、睡眠中の呼吸停止を指摘された。日中の眠気が強い | 閉塞性睡眠時無呼吸 | 睡眠専門の医療機関での検査 |
| 安静時に脚がむずむずして寝つけない。夕方から夜に強くなる | むずむず脚症候群 | 医師に相談 |
| 極端な遅寝遅起き、または早寝早起きで社会生活に支障がある | 概日リズム睡眠・覚醒障害 | 医師に相談 |
出典:「健康づくりのための睡眠ガイド2023」p.34〜36[1]、e-ヘルスネット「不眠症」[2]
よくある質問(FAQ)
眠れないまま横になっているだけでも休息になりますか
横になるだけでも身体の休息にはなりますが、眠気がないまま寝床で過ごし続けると、寝つきの悪化や中途覚醒の増加につながると「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は記しています[1, p.8, p.27]。眠れないときは一度寝床を離れ、眠気が来てから戻る方法が勧められています。
眠れない時、何分で寝床を離れればよいですか
同ガイドに具体的な分数の基準は記載されていません。「なかなか寝つけないとき」に寝床を離れ、眠気が訪れてから戻るという手順が示されています[1, p.27]。時計を繰り返し確認する行為は焦りを強めるため、分数にこだわらず、眠気の有無で判断します。
寝る前に温かい飲み物を飲むと眠りやすくなりますか
同ガイドは、現時点で睡眠の質改善に寄与する個別の食品等は特定されていないとし、主食・主菜・副菜を中心としたバランスの良い食事を勧めています[1, p.28]。カフェインを含まない麦茶やハーブティーへの置き換えは、夕方以降のカフェイン回避の方法として挙げられています[1, p.31]。
昼寝をしても夜の睡眠に影響しませんか
e-ヘルスネットは「午後3時前までに30分以内の昼寝」を目安として挙げています[2]。同ガイドは高齢者について、長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため避けるよう記し、30分以上の昼寝を習慣とする人は将来の死亡リスクが1.27倍だったという報告を引用しています[1, p.19]。
眠れないときに市販薬やサプリメントを使ってもよいですか
e-ヘルスネットは、市販の睡眠薬はアレルギー薬の副作用(眠気)を利用したもので短期間の使用に限られ、不眠症に対する治療効果は確かめられていないと記しています[2]。サプリメントや健康食品の睡眠への効果については、本記事で参照した公的資料の範囲では評価の基準が確認できませんでした。使用の可否は医師・薬剤師に相談してください。市販薬・サプリメントに関する規制や基準は変更されることがあるため、最新情報を確認してください。
まとめ
- 眠れない夜は、無理に眠ろうとせず一度寝床を離れ、眠気が来てから戻ります。
- 原因は深部体温・光・覚醒物質・焦りの4つに整理でき、就寝の約1〜2時間前の入浴、夕方以降のカフェイン回避、寝室へのスマートフォン持ち込みをやめることで対処します。
- 朝の光、日中の運動、そろえた起床時刻で体内時計を整えると、眠れない夜が減ります。
- 生活を整えても眠れない状態と日中の支障が続く場合は、医師に相談します。
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参考文献・出典
- 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」令和6年2月(厚生労働省). 成人版 p.11〜13、良質な睡眠のための環境づくりについて p.23〜25、運動、食事等の生活習慣と睡眠について p.26〜29、睡眠と嗜好品について p.30〜33、睡眠障害について p.34〜37. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
- 三島和夫「不眠症」e-ヘルスネット(厚生労働省)最終更新2023年1月23日. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html
この記事は一般的な生活情報であり、特定製品の効果を示すものではありません。診断や治療は医師に相談してください。


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