CBDで犬・猫の眼圧は上がる?――ヒト・マウス・健康犬の研究からわかること

CBDで犬・猫の眼圧は上がる?記事アイキャッチ(茂木千恵先生監修)

✍️ 本記事は、臨床でCBDを補助的に用いている獣医師・獣医学博士の茂木千恵先生が、CBDと眼圧に関する一次文献をもとに監修したものです。眼科疾患の診断や治療方法を解説する記事ではありません。特定の製品の有効性・安全性を保証するものではなく、標準的な眼科治療の代替を提案するものでもありません。

目次

CBDを使うなら、「眼のサイン」も一緒に見ておきたい

CBDを使用している犬や猫について、「眼圧が上がることはないのか」「眼の病気がある場合も使えるのか」と心配になる方もいるでしょう。

現在の一次研究を整理すると、経口CBDが犬や猫の眼圧を一般的に上昇させるとは結論できません。

眼圧上昇が報告された研究はありますが、ヒト6例への単回舌下投与や、マウスの眼表面へCBDを直接投与した実験です。一方、健康なビーグルにCBDを36週間経口投与した研究では、対照群との間に眼圧の差は認められませんでした。対象となった動物、投与経路、製剤、投与期間を分けて読むことが重要です。

本記事でいう「眼のサイン」とは、家庭で眼科疾患や眼圧を診断することではありません。普段の動き方や見え方に関わる行動の変化に気づき、CBDの使用状況とともに獣医師へ伝えるための手がかりを指します。

この記事でわかること

  • CBDと眼圧を扱ったヒト・マウス・健康犬の研究結果
  • マウスの眼へ実際に投与されたCBD製剤の内容
  • CBDが犬の涙やけを改善するという根拠があるのか
  • 眼圧モニタリングを獣医師に相談したほうがよい場合
  • CBD使用中に家庭で記録しておきたいこと

行動の変化の背景に、眼科疾患が隠れていることがある

犬や猫の行動が変わったとき、加齢や性格の変化だけでなく、痛み、視覚や聴覚の変化、認知機能の変化など、身体的な要因が関係していることがあります。次のサインは、日常生活で気づきやすい変化です。

観察する場面気づきやすい眼のサイン
眼の見た目眼ヤニが出る、結膜が充血している
暗さ・時間帯夕暮れ時や暗い場所で活動性が下がる、動きをためらう
光への反応光を眩しがる(羞明)、明るい場所を避ける
接触・驚き急に触ろうとすると驚く、以前より驚きやすい
情緒・気分不安感が増す、怒りっぽくなる

一方、こうした行動は視覚低下に特有ではありません。関節痛、音への過敏性、聴覚低下、認知機能の変化、薬剤による眠気や運動失調などでも起こり得ます。行動の変化だけから、眼圧が上がっていると判断することはできません。


CBDと眼圧(IOP)について報告されていること

ヒト舌下・マウス点眼・健康犬経口で眼圧研究の結果が異なることの整理

CBDと眼圧を考えるうえで、特に重要な一次研究を整理すると、次のようになります。

研究テーマ対象主な結果出典
健康犬への長期経口CBD投与眼科的に健康なビーグル18頭涙液産生量・眼圧に群間差なし。涙液へのCBD移行を確認Jost et al., 2024[1]
CBDのマウス眼局所投与と眼圧野生型およびCB1受容体欠損マウス野生型では眼圧上昇、CB1受容体欠損マウスでは一時的に低下Miller et al., 2018[2]
CBDのヒトでの単回舌下投与と眼圧眼圧高値または初期原発開放隅角緑内障のヒト6例20 mgでは眼圧低下なし。40 mgでは4時間後に一過性上昇Tomida et al., 2006[3]

Jostらの健康犬試験では、CBD 5または10 mg/kgを1日1回、36週間経口投与しても、涙液産生量と眼圧に対照群との差は認められませんでした。CBDは涙液へ移行していましたが、試験期間中の眼科的有害所見も確認されていません。

Millerらのマウス研究では、市販のCBDオイルをそのまま眼へ塗ったわけではありません。CBD 5 mM、すなわち約1.57 mg/mLの乳化分散液を5 µL、CBD量として約7.9 µg、片眼の眼表面へ単回局所投与しています。反対側の眼には、CBDを含まない同じ基剤が投与されました。野生型マウスでは眼圧が上昇した一方、CB1受容体を欠くマウスでは一時的に眼圧が低下しました。したがって、この研究は「CBDは眼圧を一方向に上げる」と示したものではなく、受容体の条件によって相反する作用が現れる可能性を示した機序研究です。

マウス研究でCBDの眼圧作用が受容体条件で相反することの図

CBDは犬の涙やけに効くのでしょうか

健康犬への36週間経口CBD投与で眼圧・涙液産生に群間差がないこと

現時点で、CBDが犬の涙やけを改善するかどうかを直接検証した臨床研究はありません。

Jostらの研究では、経口CBDが犬の涙液へ移行することが初めて確認されました。一方、CBD群と対照群の間で、シルマー涙液試験による涙液産生量に差はありませんでした。

この研究で評価されたのは、涙液産生量、眼圧、涙液中のCBD濃度です。目周りの被毛の着色範囲の変化や涙やけがある犬での改善率は評価されていません。そのため、CBDによる涙やけ改善効果は区別して考える必要があります。

Jostらの研究は「CBDが涙やけに効かない」ことを証明したものではありません。しかし、現時点で「CBDが涙やけを改善する」と説明できる科学的根拠にもなりません。


猫について分かっていること

猫では、1984年にCBDを眼へ局所的・持続的に投与した研究があり、CBD投与眼の眼圧は基剤対照より低い方向に変化しました。ただし、CBDを毎時20 µgで9日間、浸透圧ミニポンプを用いて眼へ直接送達した研究であり、現在のペット用CBDオイルの経口投与とは大きく異なります。

そのため、猫については、一般的な経口CBD使用が眼圧へ与える影響を判断できる直接的なデータが不足しているというのが現在の整理です。


眼圧モニタリングを獣医師に相談したい症例

眼圧モニタリングを獣医師に相談したい症例

現在得られている研究データのみを根拠に、眼疾患のない全ての犬や猫に対してCBD使用時の定期的な眼圧検査を一律で推奨する必然性はありません。

一方、次の場合は、CBDを使用していることを担当獣医師へ伝え、眼圧測定を含む診療計画について相談するとよいでしょう。

  • 緑内障または眼圧高値と診断され、定期的な眼圧測定を受けている
  • 眼科疾患の治療中で、点眼薬などを継続している
  • 眼科手術後など、獣医師から継続的な経過観察を指示されている
  • CBDの開始や用量変更と前後して、見え方や日常動作に変化を感じた

眼圧測定の要否はCBD使用の有無にかかわらず、個々の眼科疾患や治療状態に応じて判断されるべきものです。白内障、ぶどう膜炎、PRAなどを、CBD使用による眼圧上昇の特別な高リスク群として一律に位置づける根拠は存在しません。

健康犬の36週間試験は重要な安心材料ですが、眼疾患がある犬や猫について同じ結果を保証するものではありません。

なお、以下の行動や見た目の変化は、CBDによる眼圧上昇に特異的なサインではありません。家庭で眼圧を判断することはできないため、一般的な眼・視覚・行動の変化を記録し、診療時に獣医師へ共有するための観察項目として示します。


「見えにくさ」は、警戒・不安・驚きやすさとして現れる

犬は、周囲の障害物だけでなく、相手の表情や動きといった社会的な判断にも視覚情報を使っています。ヒトの顔の感情表現を見分けられることも報告されています。そのため視覚情報の精度が下がると、環境や相手の動きを予測しにくくなり、警戒、不安、驚きやすさ、不快感が増す可能性があります。

行動の変化家庭で気づく場面の例
警戒・不安これまで平気だった場所や物を避ける、落ち着かない
驚きやすさ以前より驚きやすくなった、背後からの接近に強く反応する
接触の拒否触れられることを嫌がる、なでると緊張する
動線のためらい段差・廊下・入口で立ち止まる、進むのをためらう

見えにくい犬が必ず不安定になるわけではありません。環境調整や声かけの工夫によって、十分に適応できる犬も少なくないことが報告されています。感覚障害のある犬とそうでない犬の違いが大きくないとする報告もあります。だからこそ、眼のサインを「見えているか」だけで判断せず、行動面の変化もあわせて観察することが役立ちます。


家庭でできる観察の手順:メリットとリスクを両方見る

CBDを使う場面では、痛みの緩和というメリットと、眼への影響というリスクの両方を並行して観察します。次の手順で記録すると、診療で共有しやすくなります。

  1. 眼の見た目:黒い眼脂・結膜の充血の有無を、明るい場所で確認する
  2. 明るさへの反応:暗い場所や夕暮れ時に動きが鈍くないか、光を眩しがらないかを見る
  3. 驚きやすさ:急に触れたときや背後からの接近に、以前より強く驚かないかを記録する
  4. 接触の受け入れ:なでる・抱くときに嫌がるか、余裕があるかを記録する
  5. 動線:段差や入口でためらいが増えていないかを記録する
  6. 痛みの様子:CBD使用時に和らいだと感じる場面も、あわせて記録して比較する

「以前より驚きやすくなっていないか」「触れられることを嫌がっていないか」「動線上でためらいが増えていないか」という行動面の変化は、検査数値には表れにくい一方、生活には大きく影響します。眼圧そのものは家庭で測れないため、気になるサインがあれば記録を持参して獣医師に相談してください。


CBD使用中は、「症状の変化」と「安全性」を分けてモニタリングする

CBDを使用する場合は、使用目的となった症状の変化と、安全性に関する観察を別々に記録します。

たとえば、移動や睡眠が改善したとしても、それだけで眼の状態が良いと判断することはできません。反対に、CBDを使っているという理由だけで、眼圧が上がっていると推定することもできません。

本稿で確認した主要一次研究の範囲では、CBDによって痛みが改善し、その裏で眼圧上昇が進行していたことを示す犬猫の臨床研究はありません。

したがって、安全なモニタリングとは、次を分けて確認することです。

  • 使用目的となった症状がどう変わったか
  • 眠気、ふらつきなど新たな変化がないか
  • 既存の眼科疾患が診療計画どおり管理されているか

CBDは、緑内障をはじめとする眼科疾患の標準治療に代わるものではありません。


よくある質問(FAQ)

CBDを使うと、犬や猫の眼圧は必ず上がりますか?

必ず上がるとは報告されていません。健康なビーグルへの36週間の経口投与では、CBD 5 mg/kg群、10 mg/kg群ともに対照群との眼圧差は認められませんでした。一方、マウスの眼への局所投与と、ヒト6例への40 mg単回舌下投与では、一時的な眼圧上昇が報告されています。研究条件が異なるため、一つの結論にまとめることはできません。

CBDは犬の涙やけに効きますか?

現時点で、CBDが犬の涙やけを改善することを直接検証した臨床研究はありません。健康犬では、経口CBDが涙液へ移行することは確認されましたが、涙液産生量は変化せず、涙やけの色や範囲は評価されていません。

家庭で眼のサインをどう見分ければよいですか?

黒い眼脂や結膜の充血は見た目で確認できます。暗い場所での動きの鈍さ、光を眩しがる様子、急に触ると驚く反応は、場面を決めて観察すると気づきやすくなります。あわせて、驚きやすさ・接触の拒否・動線のためらいといった行動の変化も記録しておくと、診療で共有しやすくなります。

CBDを緑内障の治療に使えますか?

今回紹介した研究は、犬や猫の緑内障治療としてCBDを支持するものではありません。処方された点眼薬や標準治療を、CBDに置き換えないでください。

日本でCBDを犬や猫に使うことは認められていますか?

日本では、CBDを含む製品であっても、製品中のΔ9-THCが法令上の残留限度値を超える場合は規制対象となります。そのため、国内で使用する際は、THC残留限度値などの基準に適合した製品であることを確認する必要があります。一方で、CBDを犬や猫の疾患の治療・予防を目的とした動物用医薬品として使用することは、現時点では一般に承認された使い方ではありません。ペット用サプリメント等であっても、病気の治療・予防効果をうたう表示や説明を行う場合は、動物用医薬品等としての規制対象となる可能性があります。CBDは治療薬の代わりになるものではありません。獣医師と相談しながら、体調・併用薬・血液検査・製品情報を確認したうえで、補助的に検討することが大切です。規制や基準は変更されることがあるため、最新情報を確認してください。


参考文献

  • Jost HE, Spitznagel K, Alvarenga IC, Peraza J, Banks K, McGrath S, de Linde Henriksen M. Long-term effect of oral cannabidiol administration to healthy adult dogs on tear production, intraocular pressure, and tear concentrations. Veterinary Ophthalmology. 2024;27:357–366. doi:10.1111/vop.13164.
  • Miller S, Daily L, Leishman E, Bradshaw H, Straiker A. Δ9-Tetrahydrocannabinol and cannabidiol differentially regulate intraocular pressure. Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2018;59(15):5904–5911. doi:10.1167/iovs.18-24838.
  • Tomida I, Azuara-Blanco A, House H, Flint M, Pertwee RG, Robson PJ. Effect of sublingual application of cannabinoids on intraocular pressure: a pilot study. Journal of Glaucoma. 2006;15(5):349–353. doi:10.1097/01.ijg.0000212260.04488.60.

茂木千恵先生

監修:茂木 千恵 先生(獣医師・博士(獣医学)/日本アニマルCBD協会 学術顧問)

モンパニエ・動物臨床行動学研究室。臨床でCBDを補助的に用いる立場から、本記事のCBDと眼圧に関する記述を一次文献に基づき監修。

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本記事で解説した研究は、製品の効果を示すものではありません。使用を検討する際は、かかりつけの獣医師にご相談ください。

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この記事を書いた人

アストラサナ広報担当。カンナビノイドをはじめとする健康情報をわかりやすくお伝え。
日本においても欧州水準まで身近にすることを目標に日々頑張っています。

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