✍️ 本記事は、アストラサナ・ジャパンのKOL(Key Opinion Leader)である 正高佑志 医師 の執筆に基づいて作成されています。
CBDや大麻医療に関する最新の科学的エビデンスをわかりやすくお届けすることを目的としています。
なお、本記事の内容は特定の効果効能を保証するものではなく、診断・治療・予防を目的としたものではありません。
甲状腺とその疾患について

甲状腺の役割
甲状腺は首の前面にある内分泌器官で、体の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。
このホルモンは「体のアクセル」に例えられることもあり、代謝を活発にする役割を持っています。
甲状腺の病気は大きく2種類に分けられます。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)とは
甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、以下の症状が見られます:
- 動悸
- 体重減少
- 発汗
- 手の震え
甲状腺機能低下症(橋本病)とは
甲状腺ホルモンが不足し、以下の症状が起こります:
- 疲労感
- 体重増加
- 寒がり
- 皮膚の乾燥
どちらも自己免疫の異常が関与しているとされ、女性に多く見られる疾患です。
橋本病とバセドウ病の比較
| 項目 | 橋本病(機能低下症) | バセドウ病(機能亢進症) |
|---|---|---|
| 甲状腺ホルモン | 不足 | 過剰 |
| 主な症状 | 疲労感、体重増加、寒がり、皮膚乾燥 | 動悸、体重減少、発汗、手の震え |
| 原因 | 自己免疫の異常 | 自己免疫の異常 |
| 好発 | 女性に多い | 女性に多い |
大麻と甲状腺機能の関係

大麻やCBDが甲状腺に与える影響はまだ研究途上ですが、興味深い報告があります。
2017年アメリカの疫学研究
2017年、アメリカの研究チーム(Sonali Malhotraら)が大規模疫学データを解析したところ
| 項目 | 大麻使用者での結果 |
|---|---|
| TSH(甲状腺刺激ホルモン) | 低め |
| TPO抗体陽性率 | 低め |
という結果が得られました。
研究から示唆されること
これは、大麻が自己免疫性甲状腺疾患に対して保護的に働いている可能性を示唆しています。
ただし、これは疫学研究(観察研究)であり、因果関係を証明するものではありません。
臨床研究の現状

臨床試験・症例報告は存在しない
2025年現在の時点で、甲状腺疾患に対するCBDや大麻の臨床試験・症例報告は存在していません。
| 研究タイプ | 存在 |
|---|---|
| 臨床試験 | ❌ なし |
| 症例報告 | ❌ なし |
| 疫学研究 | ✅ 1件(2017年) |
症状緩和の可能性
CBDが疲労、不安、不眠といった症状に役立つ可能性は考えられますが、甲状腺疾患そのものの根本治療として有効かどうかは、まだ「なんとも言えない段階」です。
標準治療とのバランス

甲状腺疾患は、すでに有効な標準治療があります。
橋本病の標準治療
ホルモン補充療法(チラージンなど)
バセドウ病の標準治療
- 抗甲状腺薬
- 放射線治療
- 外科的手術
標準治療の比較
| 疾患 | 標準治療 |
|---|---|
| 橋本病 | ホルモン補充療法(チラージンなど) |
| バセドウ病 | 抗甲状腺薬、放射線治療、外科的手術 |
これらを組み合わせることで、多くの患者は症状コントロールが可能です。
CBDの位置づけ
CBDやカンナビノイド製品の使用を検討する際は、まずは 専門医の診断・標準治療を優先 し、それでも症状緩和が不十分な場合に補助的に考えるのが現実的でしょう。
| 項目 | 現状 |
|---|---|
| 根本治療としての有効性 | 未証明 |
| 症状緩和の可能性 | 疲労、不安、不眠に役立つ可能性 |
| 推奨される使用法 | 標準治療を優先し、補助的に検討 |
よくある質問(FAQ)

橋本病にCBDは効果がありますか?
直接的な効果は証明されていません。
現在の研究状況
| 研究タイプ | 存在 | 結果 |
|---|---|---|
| 臨床試験 | ❌ なし | – |
| 症例報告 | ❌ なし | – |
| 疫学研究 | ✅ あり | TPO抗体陽性率が低め |
症状緩和の可能性
CBDが疲労、不安、不眠といった橋本病に伴う症状に役立つ可能性はありますが、甲状腺疾患そのものの治療としての有効性は「なんとも言えない段階」です。
バセドウ病にCBDは効果がありますか?
直接的な効果は証明されていません。
現在の研究状況
- 2025年現在、臨床試験・症例報告は存在しない
- 疫学研究では、大麻使用者でTSHが低めという報告あり
注意点
バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰になる疾患です。2017年の疫学研究では大麻使用者でTSHが低めでしたが、これがバセドウ病にどう影響するかは不明です。
CBDは甲状腺ホルモンに影響しますか?
直接的な影響は不明ですが、興味深い疫学データがあります。
2017年疫学研究の結果
| 項目 | 大麻使用者での結果 |
|---|---|
| TSH(甲状腺刺激ホルモン) | 低め |
| TPO抗体陽性率 | 低め |
解釈の注意点
- これは観察研究であり、因果関係を証明するものではない
- 大麻使用者の生活習慣など、他の要因が影響している可能性もある
- 自己免疫性甲状腺疾患に保護的な可能性が示唆されているが、確定的ではない
標準治療と併用できますか?
必ず専門医に相談してください。
推奨される使用法
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 優先 | 専門医の診断・標準治療 |
| 2. 検討 | 症状緩和が不十分な場合に補助的に |
| 3. 相談 | 必ず専門医に相談してから使用 |
注意点
- CBDが甲状腺薬と相互作用する可能性は完全には否定できない
- 特にチラージン(レボチロキシン)との併用は、専門医の指導が必要
- 自己判断での使用は避ける
日本で使用できるCBD製品はありますか?
THC非検出の製品のみが健康食品・化粧品として流通しています。
日本での現状
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 合法性 | THC非検出の製品のみ合法 |
| 流通形態 | 健康食品、化粧品 |
| 医薬品承認 | なし |
購入時の注意点
- COA(成分分析証明書)の確認
- THC不検出が証明されている製品を選ぶ
- 第三者機関による検査結果が公開されているか確認
- 信頼できる販売元
- 国内で正規流通している製品を選ぶ
- 個人輸入はリスクがあるため避ける
まとめ
大麻やCBDが甲状腺疾患に直接効果を持つかどうかはまだ証明されていません。
現在の研究状況
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 臨床試験 | なし |
| 症例報告 | なし |
| 疫学研究 | 1件(2017年、保護的な可能性を示唆) |
今後の可能性
しかし、免疫や炎症に関わる作用があることから、将来的に研究が進めば「症状緩和の補助的選択肢」となる可能性はあります。
現時点での推奨
| 優先順位 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 専門医の診断を受ける |
| 2 | 標準治療を優先する |
| 3 | 症状緩和が不十分な場合にCBDを補助的に検討 |
| 4 | 必ず専門医に相談してから使用 |
出典一覧
- Malhotra S, et al. The impact of marijuana use on thyroid function and autoimmunity. J Clin Endocrinol Metab. 2017;102(7):2712–2718.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28591855/
この記事の監修者

正高佑志 医師
アストラサナ・ジャパン KOL(Key Opinion Leader)
1985年生まれ。医師。熊本大学医学部医学科卒。一般社団法人GREEN ZONE JAPAN代表理事&臨床カンナビノイド学会副理事長として、大麻草の安全性や有用性に関する啓発活動に従事。著書『お医者さんがする大麻とCBDの話』など。
専門分野:カンナビノイド医療、内分泌疾患、自己免疫疾患

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