欧州市場インサイト

欧州CBDマーケットインサイト(2025年)

欧州のCBD市場は日本に比べて3〜5年先行しており、その規制動向やビジネス環境は日本企業の戦略にとって重要な指標となります。2025年はスイス・チェコ・イギリスを中心に法整備が進む転換期を迎え、国ごとに異なる規制対応が求められます。

アストラサナグループは、スイス本社を拠点に欧州と日本で事業を展開し、現地ネットワークを通じて最新の市場情報を発信しています。本レポートでは、欧州主要国の規制とビジネス環境を整理し、日本企業の新規ビジネス戦略に役立つ実践的なインサイトを提供します。

【注意】スイスやチェコでは医療用大麻の制度が進展していますが、日本では法整備の途上にあり、当社として医療用大麻の取扱いは行っておりません。欧州ではTHCの許容閾値が日本より高く設定されていますが、アストラサナ・ジャパンは日本の法基準に準拠した製品のみを扱っています。当社はCBD関連製品(CBD、CBG、CBN)のみを取扱い、日本国内において違法成分(THC)や違法となる大麻草の花穂(フラワー)の取扱いや合法化の提唱は一切行っておりません。

スイスのCBD市場:寛容な規制と食品基準の明確化

スイスでは、THC含有量が1%未満のCBD製品は合法とされており、欧州の中でも最も進んだ市場のひとつとして位置づけられています。食品・飲料については厳格なTHC基準が適用されているものの、その他の分野ではCBDの活用が広がり、消費者の認知度も高まりつつあります。

特にCBDオイルなどの摂取型製品は、現行法のもとでは化粧品や化学品としての使用に限られており、内服用としての販売は認められていません。一方で、規制の明確化が進むことで、品質や安全性を担保した市場の拡大が見込まれています。

さらに2025年には、レクリエーション用途に関する法改正も進展しており、成人による自家栽培や限定的な販売を認める草案が承認されるなど、新たな市場創出に向けた動きが具体化しています。

こうした背景から、スイスのCBD市場は法制度の先進性と需要拡大の両面で欧州における重要拠点であり、今後も事業機会が広がることが期待されます。

イヴ・アントニアッツィ
アストラサナ・ホールディングAG代表

チェコのCBD市場:低THC製品と法整備の進展

チェコでは、2025年7月に施行される「精神活性物質法」により、THC含有量1%以下の低THC大麻製品(エキス、ティンクチャー等)が正式に規制の枠組みに組み込まれ、合法的な市場流通が認められる見込みです。これにより、従来グレーゾーンにあった製品が明確な法的基盤のもとで展開できるようになり、事業者にとって大きな機会が生まれます。

チェコはこれまでも2013年の医療用大麻合法化をはじめ、柔軟な政策を進めてきました。さらに2026年からは最大3株までの個人栽培(自家消費用)解禁が予定されており、制度面の自由度は欧州の中でも際立っています。

こうした流れを受け、チェコは今後も欧州におけるCBD・低THC製品市場の先進国として位置づけられることが期待されます。新法施行によって、事業者は合法性・透明性の確保された環境下での製品開発や流通拡大が可能となり、投資先やビジネスパートナーにとっても魅力的な市場となっています。

トマス・リスカ教授
アストラサナ・チェコ/Releaf代表

イギリスのCBD市場:Novel Food認証と摂取基準

イギリスは、CBD製品に関して世界的にも最も明確な規制を持つ市場のひとつです。イギリス食品基準庁(FSA)は2025年7月にガイドラインを更新し、CBDの一日摂取許容量(ADI)を10mg、THCの上限を0.07mg/日と定めました。これにより、消費者安全の観点から基準が一層厳格化され、メーカー・ブランドは製品設計や表示において高いコンプライアンス対応が求められています。

一方で、Novel Food(新規食品)承認プロセスは引き続き進行しており、2025年初頭までに8件のCBD製品が安全性評価を通過しました。ただし、承認には時間とコストを要し、多くの事業者にとって参入障壁となっています。その結果、一部では規制の硬直性や停滞感に対する懸念も表明されており、将来的な規制改革の必要性が指摘されています。

それでも、イギリス市場は「明確な規制のもとで製品展開が可能」という点で、欧州他国と比べても事業計画を立てやすい環境です。安全基準を満たした製品は、消費者からの信頼を獲得しやすく、中長期的には安定した需要とブランド価値の向上につながる可能性があります。

サム・マラック
アストラサナUK代表/AST Commerce代表

欧州のCBDペットマーケット:規制環境と成長ポテンシャル

欧州におけるCBDペット市場は、近年急速に注目を集めており、ペットの健康維持・ストレス軽減・高齢期のケアといった分野で需要が拡大しています。特にドイツ、フランス、イギリスを中心に、ペット飼育数の増加と「ペットを家族と同様にケアする」意識の高まりが、市場の成長を後押ししています。

欧州ではヒト用CBD製品と異なり、ペット向けCBDについては統一されたEUレベルの規制が存在せず、各国の獣医薬規制や食品規制に準拠する必要があります。

欧州のCBDペット市場では、犬・猫向けのCBDオイルやおやつが主要カテゴリーを占めており、特に鎮静作用や関節ケアを目的とした製品が多く展開されています。こうした製品は、自然派・ナチュラル志向の飼い主を中心に受け入れられており、着実に市場浸透が進んでいます。さらに、ペットケア市場全体の拡大を背景に、CBDペット製品も今後二桁成長を継続する見込みが示されています。

サンドラ・ブルックナー
アストラサナ・アニマルヘルスAG代表

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