本ページは、エンドカンナビノイドシステム(ECS)およびCBDに関する最新の研究知見をまとめた一般的な情報提供です。疾病の診断・治療・予防を目的としたものではなく、医薬品医療機器等法(薬機法)における効能効果を標榜するものではありません。健康上の判断や使用に関しては、必ず医師・獣医師などの専門家にご相談ください。
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは
エンドカンナビノイドシステム(ECS: Endocannabinoid System)は、1990年代に発見されて以来、神経科学・免疫学・内分泌学の分野で注目を集めています。人間や犬・猫を含むすべての哺乳類に存在し、体の恒常性(ホメオスタシス)を維持する中心的な役割を果たしています6。
ECSの主要構成要素
- カンナビノイド受容体(CB1・CB2) — 体内に広く分布し、刺激に応答して多様な機能を調整。
- エンドカンナビノイド — 体内で必要に応じて生成されるカンナビノイド。代表例はアナンダミドと2-AG。
- 酵素 — エンドカンナビノイドを合成・分解し、システム全体のバランスを管理。
ECSが関与する主な生理機能
ヒトのECSとCBDの作用
人間の体内に存在するECSは、心身の健康に直結しています。脳や脊髄、免疫細胞、内臓に広く分布し、ストレスや炎症反応の調整、睡眠・食欲・気分の安定に寄与します。ECSの機能低下は不安障害や慢性疼痛、不眠症などとの関連が報告されています6,7。
主要な受容体
代表的なエンドカンナビノイド
- アナンダミド(AEA) — 幸福感や気分調整に関与。
- 2-AG — 炎症抑制や神経保護作用に寄与。
CBDの多面的な作用
CBDは非精神活性成分であり、CB1・CB2のみならず、セロトニン受容体やGABA_A受容体、GPR55など多くの標的に作用します7,10,11。
- 抗炎症作用 — 慢性的な炎症を抑制。
- 鎮痛作用 — 神経性・炎症性疼痛を軽減。
- 不安の軽減 — 不安障害やストレス関連症状の緩和に寄与。
- 神経保護作用 — 神経細胞の損傷を抑制。
- 抗酸化作用 — 活性酸素を抑え、細胞の健康を保護。
動物(犬・猫)のECSとCBD
ECSは犬や猫を含むすべての哺乳類に存在し、痛み・炎症・ストレス応答・睡眠・食欲などの調整に関与します6。
犬における特徴
犬は脳内のCB1受容体を他の哺乳類より多く持ち、THCに非常に敏感です。ごく少量でも神経学的な不調を示すため、犬にはTHCフリー製品が推奨されています6,12。
動物研究の報告
CBDの安全性
CBDは国際的に研究され、WHOは依存性がなく乱用のリスクも低いと評価しています14。またFDAは小児てんかん治療薬「Epidiolex®」を承認し、臨床試験でその有効性と忍容性が示されています15,16。
報告されている副作用
- 肝酵素の上昇 — 長期使用や高用量で観察される場合がある。
- 眠気 — 神経活動の抑制に伴って生じる。
- 下痢・食欲低下 — 消化器系に一時的な影響を与えることがある。
副作用は多くの場合軽度ですが、薬物相互作用には注意が必要です。CBDはCYP2C19やCYP3A4などの酵素に影響するため、服薬中の方は必ず医師や薬剤師に相談する必要があります15。
さらに、市販製品には表示どおりのCBDが含まれていないケースや、THC・農薬・重金属などの混入が確認された事例もあります18,19。そのため、信頼できるメーカーが提供し、第三者分析(COA)を公開している製品を選ぶことが重要です。
参考文献
- Burstein S. Bioorg Med Chem. 2015 ▲
- Booz GW. Free Radic Biol Med. 2011 ▲
- Gamble LJ et al. Front Vet Sci. 2018 ▲
- Bartner LR et al. Can J Vet Res. 2018 ▲
- Devinsky O et al. Epilepsia. 2014 ▲
- Di Marzo V et al. Nat Rev Drug Discov. 2004 ▲
- Blessing EM et al. Neurotherapeutics. 2015 ▲
- Barrie N et al. Int J Rheum Dis. 2017 ▲
- Laprairie R et al. Br J Pharmacol. 2015 ▲
- Bakas T et al. Pharmacol Res. 2017 ▲
- Whyte L et al. PNAS. 2009 ▲
- Gallily R et al. Pharmacol Pharm. 2015 ▲
- McGrath S et al. AHVMA J. 2018 ▲
- WHO. Cannabidiol (CBD) Critical Review Report. 2018 ▲
- FDA. Epidiolex Prescribing Information. 最新版 ▲
- Devinsky O, et al. N Engl J Med. 2017;376:2011–20 ▲
- Huestis MA, et al. Curr Neuropharmacol. 2019 ▲
- Chesney E, et al. Lancet Psychiatry. 2020 ▲
- Madeo G, et al. Front Pharmacol. 2023 ▲
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