✍️ 本記事は、アストラサナ・ジャパンのKOL(Key Opinion Leader)である 正高佑志医師 の執筆に基づいて作成されています。
CBDや大麻医療に関する最新の科学的エビデンスをわかりやすくお届けすることを目的としています。
なお、本記事の内容は特定の効果効能を保証するものではなく、診断・治療・予防を目的としたものではありません。
日本ではここ数年、睡眠の質やメンタルヘルスに関する課題が広く語られるようになり、CBDに続く”マイナー・カンナビノイド”であるCBN(カンナビノール)への注目が高まっています。
厳格な大麻規制のもとでも、CBNを主成分とする製品は2020年頃から合法的に流通し、サプリメント的なセルフケアの選択肢として普及が進みました。
本稿では、日本在住のCBNユーザー515名を対象とする横断調査(2024年2月収集)を基に、何のために使われているのか(用途)、自己評価における有効性、副作用・依存性の自己申告、日本市場での活用上の留意点を、薬機法に配慮した表現でわかりやすく整理します。
なお、以下は学術調査の要点紹介であり、医療上の判断を代替するものではありません。
調査の概要:誰が、どのように使っているのか

調査設計
- 対象:日本在住で過去1年以内にCBNを複数回使用したユーザー
- 期間:2024年2月8日〜2月22日
- 有効回答:515名(男性75.9%、平均年齢37.4歳)
- 方法:匿名のオンラインアンケート(用途、用量、QOLの自己評価、副作用の自己申告、DSM-5準拠のセルフチェック等)
使用製品の実態
使用製品の形態は喫煙製品(Vape/ハーブ)が最も多く、次いでエディブル(食品・飲料)、オイルの順。
実態としては単一CBNよりも、CBDやCBGなど他カンナビノイドを含む配合品の利用が一般的でした。
月間支出は「5,000円未満」「5,000〜10,000円」が多数派で、継続使用者は約9割。日々の用量や体感には個人差が大きく、生活リズムや併用成分によっても変動する点がうかがえます。
主な用途:日本では「睡眠・メンタル領域」に集中

回答者の33.8%が健康目的、26.4%がレクリエーション目的、38.6%が両方と回答。
健康目的での主な用途(複数回答)
健康目的の内訳(複数回答)では、以下のような結果が得られました。
- 不眠・睡眠障害:325名(最多)
- 不安:186名
- 抑うつ:181名
- 頭痛・慢性痛・関節痛:一定数
疼痛領域も一定数みられました。
レクリエーション目的での使用
レクリエーション面では、屋外での派手な”パーティー使用”よりも、以下のようなシーンでの使用が中心です。
- 就寝前のリラックス
- 音楽・映像鑑賞
“落ち着いたシーンの質を上げる”目的が中心です。
この構図は、日本の規制環境や生活者ニーズと整合的です。精神作用を強くうたうのではなく、「夜のルーティンの質を整える」「気分の波を穏やかにする」といったセルフケア文脈で語られやすいのがCBNの特徴と言えるでしょう。
自己評価でみた有効性:睡眠・不安・慢性痛に「有意な改善」

自己評価指標(0〜10のNRS)で、使用前後の平均値を比較すると、以下のような結果が得られました。
症状 | 使用前 | 使用後 | 改善幅 |
---|---|---|---|
不眠 | 6.25 | 2.59 | -3.66 |
不安 | 6.35 | 2.80 | -3.55 |
慢性痛 | 5.08 | 2.30 | -2.78 |
いずれも統計学的に有意な改善が示されました。
調査は横断・自己申告であり、医療的な効果を断定するものではありませんが、生活者が”体感”として改善を報告している点は、製品開発・情報提供の上で重要な示唆です。
QOL(生活の質)の向上
また、QOL(生活の質)の自己評価では、以下のような結果が報告されました。
- 身体面の改善:82.7%
- 精神面の改善:84.1%
- 社会面の改善:55.4%
特に就寝前のルーティンにCBNを取り入れるケースでは、以下の側面でプラスの声が多く挙がっています。
- 寝つき
- 中途覚醒の印象
- 翌朝の主観的な疲労感
これらは、日々の満足度に直結する側面です。
安全性:副作用は概ね軽度、依存の可能性は一部で示唆

副作用が疑われる症状の自己申告は9.9%。
内容は以下のような軽度中心のものでした。
- 口渇
- 眠気
- 倦怠感
医療受診が必要だったのは515名中1名でした。
依存性について
DSM-5基準に照らした物質使用障害の可能性については5.2%。
数値のみを切り取って断じることはできませんが、「強い陶酔感を前提とする使用」ではなく、就寝前やリラックス目的の”補助的”な使い方が多いことが、重篤事例の少なさに影響している可能性があります。
安全に使用するための注意点
一方で、“ゼロリスク”ではないことも事実です。
体質・用量・タイミング・併用成分(カフェイン、アルコール、他カンナビノイド)などで体感は変わるため、以下の基本を押さえましょう。
- 初めての方は低用量から
- 夜間の安全な環境で
- 一度に複数の新成分を試さない
気になる症状が続く場合は、医療機関に相談してください。
日本ならではのポイント:法令順守と”配合設計”の重要性

日本では、カンナビノイド製品に関する規制や運用通知が更新され得るため、以下の確認が欠かせません。
- 最新のルールを確認
- ロットごとの成分分析書(COA)やTHC非検出の確認
- バッチ管理の徹底
日本市場に適した配合設計
実利用の実態としては、CBN単独よりもCBD/CBG等との配合が目立つため、“睡眠前”や”夜のリラックス”にフォーカスした多成分設計が日本のユーザーニーズと親和的です。
適切な情報提供の重要性
製品コミュニケーションでは、以下の点に注意が必要です。
- 医薬的効能の断定表現を避ける
- 「自己評価で改善が報告された」「生活者の体験談が多い領域」といった事実ベースの説明に徹する
これが、ユーザー保護と信頼性の両立につながります。
また、以下の情報も併記しましょう。
- 用量・使い方の目安
- 注意喚起(運転前は避ける、アルコールとの同時使用に注意 等)
初めてのCBN:失敗しないための基本

- 低用量スタート:目安より少なめから開始し、数日〜1週間かけて段階的に調整。
- タイミング固定:就寝前など同じ時間帯に使用して、体感の差を確認。
- 併用の見直し:カフェイン・アルコール・他カンナビノイドとの同時使用は控えめに。
- COA確認:ロットごとに第三者検査の有無とTHC非検出の確認を。
- 体調変化に注意:違和感が続く場合は医療機関へ。慢性疾患や服薬中の方は事前相談を。
まとめ:CBNは”夜の質”と相性が良い、日本的セルフケア素材
今回の国内調査では、睡眠・不安・抑うつといったメンタル領域での利用が中心で、自己評価では不眠・不安・慢性痛のスコアが有意に改善。
QOLの向上感も多数が報告しました。
副作用自己申告は約10%で軽度中心、依存の可能性は一部で示唆されるものの、重篤事例は稀という印象です。
総じて、日本の規制環境と生活者ニーズの交点において、CBNは「夜のリラックス」や「眠りの準備」といった日常の質を支える選択肢として位置づけられています。
CBNやCBDの活用は万能薬ではないからこそ、エビデンスの文脈とユーザーの安全を最優先に。「無理なく、丁寧に」が、長く使い続けるためのいちばんの近道です。
よくある質問
CBNとはなんですか?
CBN(カンナビノール)は、大麻草に含まれるカンナビノイドの一種です。CBD(カンナビジオール)やTHC(テトラヒドロカンナビノール)と並び注目されている成分ですが、精神作用(いわゆる”ハイ”)はほとんどなく、特に「休息サポート成分」として海外でも人気が高まっています。
日本でもオイルやグミ、カプセルなどに配合され、セルフケアの新しい選択肢として広がりつつあります。
CBNの基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
成分名 | CBN(カンナビノール / Cannabinol) |
由来 | 大麻草(THCの酸化により生成) |
精神作用 | ほとんどなし |
主な用途 | 休息サポート、睡眠ケア、リラックス |
日本での利用 | 健康食品、化粧品として流通 |
合法的に利用するための注意点
- 日本ではTHC(テトラヒドロカンナビノール)が基準値以下であることが合法利用の条件です
- 輸入や購入時には、COA(分析証明書)でTHC不検出を確認することが重要です
- 個人輸入は規制リスクがあるため、国内で正規に流通している製品を選ぶのが安全です
CBNとCBDの違いは何ですか?
CBN(カンナビノール)とCBD(カンナビジオール)は、どちらも大麻草に含まれるカンナビノイドですが、性質や利用シーンに違いがあります。
項目 | CBD(カンナビジオール) | CBN(カンナビノール) |
---|---|---|
由来 | 大麻草から直接抽出 | THCの酸化により生成 |
精神作用 | なし | ほとんどなし |
主な利用シーン | ストレスケア、日中のパフォーマンス維持 | 夜のリラックス、睡眠サポート |
特徴 | 心身のバランスを整えるサポート | 休息サポート成分として人気 |
使用時間帯 | 朝・昼・夜いずれも | 主に夜間・就寝前 |
つまり、CBDは「日常の調整」、CBNは「夜のリラックス」といった使い分けがイメージされやすい違いです。
合法的に利用するための注意点
- 日本ではTHC(テトラヒドロカンナビノール)が基準値以下であることが合法利用の条件です
- 購入時には必ずCOA(成分分析証明書)でTHC不検出を確認しましょう
- 個人輸入はリスクがあるため、国内で正規流通している製品を選ぶのが安心です
CBNは合法大麻ですか?
「合法大麻」という表現は正しくありません。
CBN(カンナビノール)は大麻草に含まれるカンナビノイドの一種で、日本ではTHC(テトラヒドロカンナビノール)を含まない原料から抽出された製品のみが合法とされています。依存性や強い精神作用はほとんどなく、安心して利用できる成分として注目されています。
合法的に利用するための注意点
- 日本ではTHC(テトラヒドロカンナビノール)が基準値以下であることが合法利用の条件です
- 海外から個人輸入する場合は特に注意(現地では合法でも日本では違法になる可能性があるため)
- 信頼できるメーカーや輸入業者を通じて入手することが安全です
CBNを摂取するとキマる、ハイになることはありますか?
いいえ、CBN(カンナビノール)はTHCのような強い精神作用(いわゆる”ハイ”になる感覚)はほとんどありません。
一部の研究では「軽いリラックス感」「眠気をサポートする作用」が報告されていますが、いわゆる違法薬物のような陶酔感や依存性はないとされています。
そのため、安心してセルフケアの一環として利用できる成分です。
合法的に利用するための注意点
- 日本ではTHC(テトラヒドロカンナビノール)が基準値以下であることが合法利用の条件です
- 「キマる」ような感覚がある製品は、THCが混入している可能性があるため注意が必要です
- COA(成分分析証明書)でTHC不検出を確認できる正規品を選ぶことが安心につながります
- 海外からの個人輸入品は、国によってTHCが含まれる場合があるため特に注意が必要です
CBNにはどんな効果効能がありますか?
CBN(カンナビノール)は医薬品ではないため、日本において効果効能が認められているわけではありません。
ただし、海外の研究や一般的な情報として、以下のような作用が期待されていると報告されています。
- リラックスサポート:心身を落ち着ける可能性がある
- 休息・睡眠サポート:寝つきや睡眠の質に関連する研究がある
- 鎮痛作用の可能性:基礎研究や動物実験で痛みの軽減が示唆されている
- 抗菌作用の可能性:特定の細菌に対する抗菌性が研究されている
これらはあくまで研究段階の知見であり、人への効果が確立されているわけではありません。
合法的に利用するための注意点
- 日本では健康食品や化粧品の成分としてのみ流通しています
- 「治療効果」や「効能」といった表現は薬機法違反となるため注意が必要です
- 製品を選ぶ際は、THCが含まれていない(不検出である)ことをCOAで確認してください
- 医薬品を服用中の方は、必ず医師に相談の上で使用するのが安心です
CBNの副作用はありますか?
CBN(カンナビノール)は、CBDと同様に依存性や乱用のリスクが低いとされています。一般的に大きな副作用は報告されていませんが、以下のような軽度の影響が出る場合があります。
報告されている主な副作用
副作用 | 頻度 | 対処法 |
---|---|---|
眠気・倦怠感 | 比較的多い | 就寝前の使用に限定する |
口の乾き | 時々ある | 水分補給を心がける |
一時的な集中力の低下 | まれ | 重要な作業前は避ける |
特に「休息サポート成分」として夜間に使われることが多いため、車の運転前や集中作業の直前の摂取は避けるのが安全です。
合法的に利用するための注意点
- 日本ではTHCが検出されない製品であることが合法利用の条件です
- 個人差により体調への影響が異なるため、初めて使う際は少量から試すのが安心
- 医薬品を服用している場合や持病がある場合は、必ず医師に相談してください
- 正規流通している製品を選び、COA(成分分析証明書)でTHC不検出を確認することが大切です
CBNはどんな製品で使われていますか?
CBN(カンナビノール)は、日本では健康食品やリラックスケア製品、化粧品などに活用されています。代表的な製品例は以下のとおりです。
主な製品タイプと特徴
製品タイプ | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
オイルタイプ | 舌下投与や飲み物に混ぜて使用吸収が早く、用量調整しやすい | 初めての方、細かく調整したい方 |
グミ・キャンディ | 手軽に摂取できるスナック感覚持ち運びに便利 | 外出先でも使いたい方 |
カプセル・ソフトジェル | 成分量が一定で管理しやすい。味やにおいがない | 正確な用量を守りたい方 |
スキンケア製品 | クリームやローションとして肌に塗布 | 肌ケアと併用したい方 |
ベイプ製品 | 吸引タイプで即効性がある。日本では規制確認が必要 | 即効性を求める方 |
特に「休息サポート」「睡眠ケア」を目的とした製品が多く、CBDとブレンドされて販売されるケースも増えています。
合法的に利用するための注意点
- 日本ではTHCが検出されない製品に限り、健康食品・化粧品として利用可能
- 医薬品としての効能効果は認められていないため、「治療目的」ではなくセルフケア用途で使うこと
- 個人輸入品は国によってTHCが含まれることがあるため、国内の正規ルートで販売されている製品を選ぶことが安全
- 製品選びの際は必ずCOA(分析証明書)でTHC不検出を確認すること
CBNは化粧品に使われていますか?
はい、CBN(カンナビノール)は海外を中心に一部の化粧品に応用されています。ただし、CBDやCBGと比べるとまだ珍しく、研究や市場導入は始まったばかりです。
欧州医薬品品質理事会(EDQM:European Directorate for the Quality of Medicines & HealthCare)が「化粧品中のカンナビノイド(THC, CBD, CBN)を検出する分析法」を導入するなど、CBNが化粧品に含まれる可能性を前提とした監視体制を整え始めています。
実際に海外では、アフターシェーブ乳液やエイジングケア美容液、目元クリームなどに「CBN配合」をうたった商品が販売されています。ただし日本国内ではまだ主流とは言えません。
合法的に利用するための注意点
- CBNを配合した化粧品は、THCが検出されない(不検出である)ことが条件です
- 化粧品として販売する場合、医薬品的な効能効果はうたえないことに注意が必要です
- 海外からの個人輸入品にはTHCが含まれる可能性があるため、国内の正規ルートで販売されている製品を選ぶことが安全です
参考文献
- How Cannabinol Is Utilized in Japan, a Country with Strict Cannabis Regulations—Its Purposes, Medical Effects, Adverse Events, and Dependence | Integrative Medicine Reports
- CBN調査・日本語草稿_ウェブ公開用.pdf – Google ドライブ
免責事項
本記事は、学術調査の結果を一般向けにわかりやすく要約した情報提供です。疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。
体調に不安がある場合や服薬中の場合は、必ず医師・薬剤師等の専門家にご相談ください。
法令・ガイドラインは更新される可能性があるため、最新情報とCOAの確認を推奨します。
この記事の監修者

正高佑志
アストラサナ・ジャパン KOL(Key Opinion Leader)
1985生まれ。医師。熊本大学医学部医学科卒。
一般社団法人GREEN ZONE JAPAN代表理事&臨床カンナビノイド学会副理事長として、大麻草の安全性や有用性に関する啓発活動に従事している。難治てんかん患者へのCBDの有効性に関する追跡調査と学術報告を行い、国内での治験開始への道筋をつけることに貢献した。著書『お医者さんがする大麻とCBDの話』など。
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